スピニッチ、スピナッチ、SPINACHはほうれん草。
ほうれん草ってあの茎のところがシャキシャキしてて、美味しいよね。
ほうれん草は、粋な紺色のテープで茎のところをキレイに美しく束ねられていて、根本が薄っすらとピンク、ちょろっと根が付いている。日本ではそうやって売られている。
濃い緑、粋な紺色の帯、差し色にピンク、そして、白も見え隠れ。まるで着物。
日本の美がそこにある。
毎年日本に帰ったとき、忘れかけていた和の美に感動する。いろんな場所で、ささやかなものからでさえも日本の美に遭遇する。ほうれん草もそのひとつ。
スーパーでほうれん草を手に涙を流している女がいたら、それはわたくし。
そしてそれが本来のほうれん草の流通のありかたよ。と、わなわなする。
調理に至っては、
束ねたまま、火の通りにくい茎のほうから揃えて茹でて、軽く絞り、3センチの長さに切る、みたいな、おひたしとかどんだけちゃんとしてんねん。几帳面。それだけを見ても日本の電車が時間通りにピッタリ来て、待っているドアのところにピッタリ止まるのも納得できる。
でも、こちらのほうれん草は葉っぱだけが無造作に乱暴に袋に入って売られているの。
乱暴だわ。
ちゃんとそろえて茹でるとか葉っぱ一枚一枚そろえるとか、気が狂うから。無理だから。シャキシャキの茎は?粋な差し色のピンクは?そんなの無いから。ダーっと洗ってダーーと鍋に入れてぐっちゃーと茹でる。
調理の仕方が乱暴だからそれでいいのね。きっと。まあ、すこぶるわたくし向き。
じゃ、テキトーに乱暴に料理してやるぜ。
スピニッチ&マッシュルームパイ
簡単だから。
マッシュルームをバターで炒め、スピニッチをぶっこむ。山盛りいれてもしなーっとなるので思いっきり入れよう。
塩コショウ、ナツメグ。スープストックの素(OXOとか)少々。
ナツメグいっぱい入れるタイプ。がりがり入れる。いつものごとく指もガリっと。
炒めたら粗熱を取って、カッテージチーズ(ホッタイモイジルナ的発音。コテージチーズでも可)を混ぜておく。フィリング出来上がり。
後は、パイシートをパイ皿にしいて、フィリングを入れて、
パイシートをかぶせて縁をフォークでシールド。
ピンぼけすまん。
出来たどー。
ベジの人に喜ばれること間違いなし。
ああ、パイ皿にオイルの塗りが甘かったのか、くっついてなかなかとれぬ。あーあ、お皿にサーヴしたらグチャっと形が崩れた。
まあいい。ほうれん草は袋に入っていたときからグチャグチャだし、胃に入れば形など、どうせグチャグチャになるさ。
。
。
。
…ああ、美が、
ほうれん草の美が、
遠ざかる日本の美……。